Archive for the 安部公房 Category

『浴室』

火曜日, 7月 11th, 2017 | Permalink

古本買取 東京

L’amour En Fuite (Love On The Run) – L’amour En Fuite

1)午後を浴室で過ごすようになった時、そこに居を据えることになろうとは思ってもみなかった。浴槽の中で思いをめぐらせながら、快適な数時間を過ごしていたにすぎない。服は着たままの時も脱ぐ時もあった。エドモンドソンはぼくの頭の横にいるのを好み、ぼくが前よりも晴々とした様子に見えると言った。ぼくが何か冗談を言って、二人で笑うこともあった。浴槽はやっぱり縁が並行で、背もたれは斜め、底は平らで足置きを使う必要のないものに限る、などと身ぶりたっぷりに力説したりした。

(2)エドモンドソンは、浴室から出ることを拒むぼくの態度に、心を萎ませるものを感じていたのだが、それでもぼくの暮らしを助けてくれるのだった。アートギャラリーでパートで働いて家計を賄ってくれていたのだ。

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何だかヘンテコな本を読んでいる。冒頭の文章で誰のどんな話であるかは大体予想がつくと思う。
こんな男が実際にいたらカメラを回してドキュメンタリーを撮りたい。自分は引きこもることを悪いこととは思わないので、なんだかそういうのも正しいのかもしれないと思うけど、そういうこととこの小説に描かれていることはあんまり関係がなさそうだ。読み進めていくうちに正直面白くなくなってきた。単に設定に惹かれただけみたいだ。でもカフカがこの設定で小説を書いたら面白くなりそうだなと思う。

どこかで見たが、浴槽に浸かる文化は日本独自のもので、海外に行くとまず浴槽に水を溜めて浸かるなんていうことはないらしい。なんでも、狭い浴槽に体を縮め体育座りの姿勢で風呂に入る姿は、西洋人からすると滑稽にさえ思われている、とのこと。そうなの?と、これまで観てきたフランス映画を色々と思い出してみると、いや風呂には入っているけれど、確かに体育座りでいかにも窮屈そうに風呂に入っている人はいなかった。皆足を伸ばしていた。足をうんと伸ばせる浴槽であるならば、そこを居として、好きな音楽を聴いたり本を読んだり、雨が降っている音に耳を澄ませて感慨に耽ることは出来るかもしれない。(この小説の男がしてる)。狭い浴槽ではまず無理だ。体が痛くてたまらなくなる。何かの罰かとさえ思う。だからこの小説の浴槽はまず広いことが第一条件だ。そもそも最初から浴槽の条件を身ぶりたっぷりに力説している。
逆に狭い浴槽に籠ることを想像すると、なんだかもうそれだけでジメジメとしてたまらない。そこで雨の音に耳を澄ませるなど、フランスだからこそなんだか洒落れて聞こえるが、これが日本の安アパートの一室の話、ましてや中年の男の話になると途端に陰鬱になってしまう。その陰鬱さが独特で面白いけれど。(安部公房が書いたらどうなるんだろう?)
兎にも角にも、この小説は字が大きくページ数もそんなにない。だから、あんまり面白くはないけれど、一応最後まで読んでみようと思う。

なんちゃって。

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